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社会的課題の解決をめざす+dの挑戦

「モバイル通信企業」「総合サービス企業」……、と歩みを進めてきたドコモは
顧客獲得争いに象徴される“競争”から、
パートナー企業とのコラボレーションを通じて、新たな価値を創造する
“協創”の取り組みを加速させていきます。
これが、未来に向けたドコモの取り組み、「+d」(プラスディ)。
そして、「+d」がめざすのは、日本が抱えるさまざまな社会的課題の解決です。
パートナーとドコモが創造する“新しい価値”にご期待ください。

アンデックス(株)+(株)NTTドコモ @宮城県松島湾

広大な海の「見える化」に挑戦する「+d」。

 ドコモはこれまで、強固なモバイルネットワークをはじめ、多くのお客さま、お客さまへの情報配信による送客、そしてお客さまに紐づく安全な決済の仕組みなど、さまざまなビジネス資産を育ててきた。これらの資産を専門性やアイデアを持ったパートナーに利用していただき、新たな商品やサービスを生み出していく。すなわち、パートナーの資産やアイデアにドコモの資産を足し算する、つまり「+d」することによって驚くようなイノベーションが生まれてくるはずだ。
 サービス業で先行してきたICT化の波は、いよいよ本格的に一次産業の分野にも広がってきた。なかでも、もっとも注目される機能は「見える化」だ。自然を相手にする産業では、人の手でコントロールすることが難しい対象が少なくない。特に広大な海をフィールドとする水産業ではなおさらだ。加えて近年の温暖化に呼応するように、海洋環境も変化しつつある。事実、「この時期、この場所なら、こんな魚が獲れた」という経験則が通じなくなったという声も聞かれる。
 今回、カキ養殖で知られる宮城県松島湾東名浜に投入された「水温センサ付ブイ」は本体に装備したセンサが刻々と変化する海水温を1時間単位で測定し、そのデータをクラウドサーバにアップロード。養殖業者はスマートフォンでこれらのデータから海の状況を把握し、作業のタイミングを決める参考にすることができるものだ。
 「+d」がチャレンジする海の「見える化」は、勘と経験に頼ってきた水産業を変える第一歩になるだろう。

「勘と経験」に頼る水産業は
産業として安定しにくい。
海洋環境の「見える化」は
水産業を変貌させる。

公立はこだて未来大学
システム情報科学部教授
マリンIT・ラボ 所長
和田 雅昭 氏

 大学の水産学部を卒業した後、函館で漁業機械メーカーの技術者として活躍。その後、研究者に転身した公立はこだて未来大学の和田雅昭教授は、日本における水産ICTの第一人者として知られている。技術者時代は機械による効率化と省力化で漁業を支援してきたが、研究者に転じてからは、海の環境を明らかにする、つまり海の「見える化」で、漁業支援する研究を続けている。
「自分たちの意思でコントロールできない海をフィールドにするがゆえに、漁業は“勘と経験”に頼りすぎていた。たとえば、一般的にカキ養殖では『ユリの花が咲いたらカキの種を採取する』とか、3月になったらカキを沖に出すとか、陸地の事象や暦に合わせて作業をしてきたそうです。その一方で海の環境を逐一チェックするようなことはしなかった。温暖化等、気象変化が海にも影響を与えていることを考えると“例年通り”のやり方では年によって品質や収穫量がバラつく可能性があり、これでは安定した産業として成立しにくい。海洋環境を『見える化』し、これを参考に操業することが、これからの水産業には重要です」
 今回の宮城県松島湾東名浜のプロジェクトで使用されるブイは教授が開発した「ユビキタスブイ」が原型になっており、東名浜では安定したカキ生産、養殖業者の省力化やコストダウンへの寄与が期待される。その一方で和田教授は数年前から同様のブイを日本中の沿岸部に設置し、「海のアメダス」実現をめざしている。
「日本中の気象状況を地域的に細かく監視するアメダスは約1,300か所に観測地点を持っている。同様のレベルでこのブイを日本の海に配置することで、海の可視化は進み、この情報をもとにした計画的な養殖や漁が可能になる。すると、日本の漁業はもっと安定した、魅力的な産業に育っていくと考えています」

公立はこだて未来大学 和田氏

震災で打撃を受けた
水産業の復興に、
地元IT ベンチャーとして
貢献したい。
海洋環境の「見える化」は
水産業を変貌させる。

アンデックス株式会社 代表取締役社長
三嶋 順 氏

 宮城県を代表する産業といえば、農業と水産業である。県はこの主要産業を次世代にも通用する産業として強化するため、ICTによる振興をめざしてきた。農業は穏やかにICT化が進み、次第に準備は整いつつあるが、水産業はまだまだ「勘と経験」がものを言う世界だったことから、県は水産商社に勤務した経験を持つ三嶋社長に常々、意見を求めていたという。
「大きく動きはじめたきっかけは震災でした。宮城を代表する水産業・カキ養殖の大打撃を目の当たりにして、『まず、現場に近いところからはじめよう』と心に決めたのですが、当時われわれは水産に関わるICTのノウハウを何も持っていませんでした。そこで、頼ったのが公立はこだて未来大学の和田教授です」
 教授の協力、指導を受け、最初のブイが東名浜に投入されたのが約2年前。水温センサや電源を備えた最初のブイは一つひとつが手作りで、中には浜に余っている“浮き球”を利用したものもあった。少しずつノウハウを積み上げ、この春にはドコモの通信モジュールを搭載し、航路標識の専門メーカーの協力を得た新型ブイが完成。アンデックスはブイで収集した海水温データをスマホで閲覧するアプリ開発のパートを担当した。養殖業者に負担をかけない使いやすさが好評だという。
「ただ、われわれは通信に関するノウハウを持っていないのでドコモさんの協力無しで、このプロジェクトは実現しなかったでしょう。加えて、松島のように300 近い島が点在し、地形が入り組んだところでデータを確実にアップロードするためにはドコモさんの安定したモバイル通信網は欠かせません。今回、ドコモさんのような企業と協業できたことで、社員一同、モチベーションが上がったのはもちろんですが、漁協や漁師さんにブイの説明にうかがうと、ドコモさんがパートナーだということで、誰もが真剣に耳を傾けてくださいました」
 三嶋氏の東北復興支援にかける想いが形になったこのシステム。8基の新型ブイは松島湾東名浜で稼働をはじめたばかりだが、東北に「勘と経験」だけに頼らない新しい水産業を根付くのも、遠い未来ではなさそうだ。

アンデックス株式会社 三嶋氏

「水温センサ付ブイ」プロジェクト概要

日本が誇るカキの名産地、
宮城県松島湾東名浜に設置された「水温センサ付きブイ」。

「水温センサ付ブイ」は水温センサ、データ送信部、電力源で構成される。今回、東名浜に投入されたブイはスマートフォンの閲覧アプリはアンデックス、通信モジュール部とクラウドサーバ管理はドコモが担う。

カキ養殖において海水温の確認は重要な作業のひとつ。たとえば、海中で生まれるカキの幼生を、養殖場につるしたホタテの貝殻に付着させる工程(採苗)では、海水温等を目安に作業タイミングを見極める。またカキの成長を促すため、沖に移動する際は時期を誤るとムール貝の幼生が付着してしまいカキの成長を損なう。これを避けるのも海水温の観察が大きなポイント。

水温センサ付きブイ

松島湾の東名浜に設置されたブイは8基。海面と深さ1.5〜2メートル、2か所の海水温を1時間単位で測定し、クラウドサーバにデータを蓄積していく。「これまでは船を出して1時間かけて計測していましたから、時間も燃料も大幅に節約できる」(宮城県漁業協同組合 鳴瀬支所研究会 部長・二宮義秋氏)

プロジェクト全体図
スマホの簡単な操作で、養殖場の海水温を確認

自宅、船上、加工場、港……。どこにいても、スマホの簡単な操作で、養殖場の海水温を確認できる。

トップページ 1時間単位の海水温 海水温変化のグラフ

アンデックスが開発したアプリケーション。トップページ(左)には海水温などの情報を見やすく配置。必要に応じて、1時間単位の海水温(中央)や海水温変化のグラフ(右)をチェックすることもできる。

海は変わった。しかし、
どう変わったかが
分からない。
海の「見える化」に
期待するところは大きい。

宮城県漁業協同組合 鳴瀬支所研究会 部長
二宮 義秋 氏

 きっかけは、あの大惨事だった。2011年に東北沿岸を襲った大津波は、宮城県が誇るカキを育んできた養殖場もあっという間に飲み込んだ。
 ここ松島湾の東に位置する東名浜では多くの人々の援助もあり、なんと夏には操業を再開した。しかし、翌年には養殖業者の間に戸惑いが広がる。養殖ガキの幼生である種ガキの収量が安定しなかったり、カキの成長速度が変わったり……。これまでの経験では説明できないことが次々に起こったのだ。
「実は震災から2〜3年は、津波で海が攪拌されて、カキのエサになるプランクトンが海全体に行き渡ったので、海の状態はすごく良くなったんです」
 松島湾東名浜でカキ養殖に携わる二宮義秋氏は、海の環境変化がカキの育成に影響することを肌で感じていたため、こう考えた。
「良くなることがあれば、当然悪くなることもある。目には見えない海の状態が分かれば、生産をもっと計画的に行え、効率化できるはずだ」
 知りたい海の情報はさまざまだが、まず欲しいのは海水温の変化だという。
「カキ養殖では気温や海水温が作業の目安になることが多い。漁師それぞれですが、ウチではカキの幼生を、養殖場につるしたホタテの貝殻に付着させる工程(採苗)では、気温と海水温を足し合わせて50度になる時期を目安にしています」
 ほかにもさまざまな局面で海水温が作業の参考にされるが、マンパワーでの測定は作業負担が大きい。
「養殖場を船で回って海水温を測定しますが、この作業に約1時間。船の燃料も約20L使用します。ブイで自動的に海水温を毎日チェックできれば、この負担がすべて無くなりますし、波が高くて船が出せないときも、測定できるわけですから365日、抜けの無いデータを取ることができます」
 省力化への貢献はもちろんだが、10年20年とデータを蓄積していくことで、海洋環境とカキ養殖の因果関係も明らかになっていくだろう。このデータを生産計画に利用することで、これまで以上に品質の良いカキの安定した生産が期待される。

宮城県漁業協同組合 二宮氏

すべてのプレーヤーが
震災復興の支援、という
「志」を持って集まった。
今回の「+d」は
その想いの結実です。

(株)NTTドコモ
東北復興新生支援室 担当部長
山田 広之

 今回のシステム構築にあたり、ドコモ東北復興新生支援室の山田広之は、すでに仙台で水産ICTに取り組んでいたアンデックス・三嶋社長との出会いをきっかけに実った、自社アセットによる復興支援に大きな意義を感じている。
「震災後、東北復興新生支援室を起ち上げたものの、当初はまず目の前の復興が最優先でした。私たちもボランティアの他、ドコモホームページでの東北産品等の認知拡大、販路拡大をお手伝いしながら、いつかはわれわれの専門分野で本格的に東北の復興、水産業の支援をしたいと考えていました」
 今回の「+d」が生まれた背景には震災復興や水産業が抱えるいくつもの課題があるが、山田は「純粋な想いを持ったプレーヤーの出会い」こそが原動力だったと振り返る。
「仙台で育った和田教授(公立はこだて未来大学)も震災直後から、『何か手伝えることはないか』と、県や県の漁業試験場等にアプローチされたと聞いていますし、仙台でITベンチャーを率いる三嶋社長は『何とか宮城を、東北を立て直したい』という熱い想いをお持ちでした。それぞれが持つ技術や知見を超えた、三者の『志』が今回のプロジェクトを成功に導いたように思います」
 その上で、やはりドコモの持つアセットはこのプロジェクトに欠かせない。通信キャリアとして“つなぐ”ことを最大の使命とするドコモは、震災で大きな被害を受けたモバイル通信網をこれまで以上に高い信頼性と品質をめざして復興させた。この通信網が海洋上でも365日、データを送信するブイの大きな力になったのは言うまでもない。
「まずは、このブイがカキ養殖に貢献できることを実証し、次のステップでは全国の養殖場への展開をめざします。また将来的には、われわれの持つさまざまなアセットを使い、ここで育った良質なカキをお客さまにダイレクトにお届けするような形でも水産業を応援していきたいですね」

NTTドコモ 東北支社 山田

ドコモの「+d」が創る、水産業の未来。

 日本の水産業は第二次世界大戦後、世界一の漁獲量を記録したこともあるが、成熟期を経た後は長期的な低迷状態が続いている。排他的経済水域の設定、水産資源の減少などの外的要因のほか、漁業就業者の高齢化や若年就業者の減少に加え、魚価の低下やコストの負担増なども日本の水産業に重くのしかかる。日本の水産業は従来のような漁獲量を競う、薄利多売のビジネスでは立ち行かなくなっている。
 この対極にあるのが省力化、合理化を行った上で、資源を保護しながら質を追求する水産業だ。魚のブランド化などはその一例といえるだろう。そして、これを実現するためのキーワードが「海の見える化」であり、水産ICTはその手段となる。「勘と経験」に頼っていた水産業へのICT導入は生産者の暮らしを安定させ、水産資源を守り、良質な水産物の安定供給が期待される。
 いよいよはじまった水産分野の「+d」は東北のみならず、日本全国の水産業を変える可能性を秘めている。

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