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社会的課題の解決をめざす+dの挑戦

「モバイル通信企業」「総合サービス企業」……、と歩みを進めてきたドコモは
顧客獲得争いに象徴される“競争”から、
パートナー企業とのコラボレーションを通じて、新たな価値を創造する
“協創”の取り組みを加速させていきます。
これが、未来に向けたドコモの取り組み、「+d」(プラスディ)。
そして、「+d」がめざすのは、日本が抱えるさまざまな社会的課題の解決です。
パートナーとドコモが創造する“新しい価値”にご期待ください。

(株)リモート+(株)NTTドコモ  @長崎県壱岐市

和牛繁殖をイノベートした「+d」。

 ドコモはこれまで強固なモバイルネットワークをはじめ、多くのお客さま、お客さまへの情報配信による送客、そしてお客さまに紐づく安全な決済の仕組みなど、さまざまなビジネス資産を育ててきた。これらの資産を専門性やアイデアを持ったパートナーに利用していただき、新たな商品やサービスを生み出していく。すなわち、パートナーの資産やアイデアにドコモの資産を足し算する、つまり「+d」することによって驚くようなイノベーションが生まれてくるはずだ。
 一次産業でICT導入がもっとも進んでいるのは農業分野といわれているが、実際に商品として普及が進んでいるサービスは決して多くない。そんな中で全国的に普及が進み、和牛繁殖の分野で大きな効果を上げている「+d」が分娩監視システム「モバイル牛温恵」だ。
 和牛の繁殖において、利益の源泉は仔牛である。母牛に仔牛を産ませ、農家はその仔牛を丁寧に育て出荷することで利益を上げる。さらに優秀な仔牛は母牛や種牛となり、継続的な利益を農家にもたらしていく。しかし、その仔牛のうち約5.3%は分娩時のトラブルで命を失うという現実があり、その数は約3万頭にも上る。
 この大きな損失を防ぐために開発された「モバイル牛温恵」は母牛の分娩タイミングを予測し、深夜でも分娩介助が行えるよう支援する。また、これまでいつ分娩が始まるか分からず、何日も連続で夜回りを行わなければならなかった農家をこの厳しい作業から解放した。省力化と利益を支援する農業ICTはどのように生まれたのだろう。そして、どのように進化していくのだろう。

年間3万頭の仔牛が
命を落とす分娩事故を防ぎ、
農家の莫大な損害と
喪失感を救え。

JA全農
畜産生産部次長
神谷 誠治 氏

 和牛の生産は繁殖農家と肥育農家の分業体制で行われ、繁殖農家は母牛と母牛から産まれる仔牛を飼育。仔牛は10か月前後育てたところで、肥育農家に引き取られる。この仔牛価格は概ね40~50万円で推移してきたが、ここ数年は高騰が続き、今年1月には75万円という「異次元」の価格に突入した。繁殖農家にとっては「活況」という言葉が当てはまるが、その一方で肥育農家の経営を圧迫し、和牛生産現場のバランスが崩れつつある。
「最大の問題は母牛の減少です。2010年に発生した口蹄疫の流行、大手牧場の破綻等で一気に母牛が減ったことも大きな理由ですが、繁殖農家の高齢化による離農等で農家戸数、母牛は年々、減少を続けています」
 JA全農畜産生産部次長・神谷誠治氏が指摘するように母牛が減少すれば、仔牛も減少する、仔牛の供給が減れば価格の高騰は止まらず、いつか生産システムは破綻する。そんな状況に危機感を持つ神谷氏が着目するのは分娩時の事故だ。
「牛の分娩では5%を超える確率で事故が起こり、仔牛が失われます。この命を救えていれば、年間約3万頭の仔牛が市場に出ていたはずですし、この仔牛の中から母牛を育てることもできたのです」
 加えて、農家の高齢化による離農も大きな問題だ。
「農家は母牛の分娩が近づくと、牛舎の夜回りをして分娩に備えるわけですが、だからといって昼間の作業を休めるわけではありません。こういった厳しい労働環境に加え、高齢化も進んでいるため、多くの繁殖農家は将来への不安に揺れています。そこにきて、仔牛の価格に引っ張られるように母牛の価格も暴騰していますから、これを機にすべての牛を売り、離農を決断する農家も増えています」
 こういった逆風下において、畜産業を持続可能な成長産業へと再構築をめざすJA全農にとって、畜産分野におけるICTへの期待は大きい。

JA全農 畜産生産部次長 神谷氏

農業の経験と
磨き上げた半導体技術が生んだ
「モバイル牛温恵」で、
“分娩事故ゼロ”をめざす。

株式会社リモート 代表取締役社長
宇都宮 茂夫 氏

 大分県のベンチャー企業・リモートの創業者、宇都宮茂夫氏は農家に生まれたものの、農業に明るい未来を見出せず、外資系半導体メーカーのエンジニアに転じた異色の経歴を持つ。宇都宮氏が農業に見切りをつけたのは約40年前だが、2003年にある農家を訪れ、農業が当時と変わらぬ状況であることを 知り唖然とした。「牛の分娩予定日は10日ずれることもざらです。分娩は深夜になることも多いので、事故を防ぐためには毎晩、夜回りをしなければならない。ところが、それでも見逃して分娩事故が起きることもある。本来なら数十万円になる仔牛を失い、1年近い労働も水の泡。この理不尽さは何も変わっていませんでした」
 そんな厳しい労働環境の改善と分娩事故ゼロをめざし、大分県の畜産試験場等と共同開発したのが、母牛の遠隔監視システム「モバイル牛温恵」だ。
 このシステムは牛の分娩兆候として、体温が微妙に低下する点に着目。無線通信機能を内蔵した体温センサを分娩が近い母牛の膣内に挿入しておく。センサは牛の体温を0.1度単位で5分ごとに測定。これをドコモのモバイル通信網経由で監視サーバに送り、出産がはじまる体温変化のパターンが表れた場合(分娩約24時間前の段取り通報)と、体温センサが一次破水で腟外に脱出した場合(駆けつけ通報)、スマートフォンに通知する。
 これにより、夜回り不要で農家は余裕を持って出産に立ち会うことができるようになり、約5%から0.4%まで分娩事故率の減少が期待できる(JA全農試算)。
 「モバイル牛温恵」開発にあたって、宇都宮氏がもっとも留意したのが、価格と使いやすさ。普及が進んでこそ、目標とする“分娩事故ゼロへの挑戦”に近づくからだ。
「母牛の体内に挿入する機器ですから、たとえばセンサに納められたバッテリーが液漏れして、母牛を傷つけるようなことは絶対あってはならない。そこで気密性を確保するため、バッテリーを交換せず5年間黙々と稼働するよう、半導体等を工夫することで低消費電力を実現しました。完全密封型にしたことで、電子部品でありながらお湯(60℃/10分max)で丸洗い消毒することもでき、衛生面でも安心して使っていただけます」
 価格面でも母牛50頭規模の繁殖農家に導入した場合、母牛1頭あたりの監視コストは1日あたり11円を実現。製品の安全性、導入しやすい価格、そして販売面でのパートナーにJA全農とドコモを迎えたことで、普及スピードのさらなる加速が期待される。

株式会社リモート 宇都宮氏

「モバイル牛温恵」プロジェクト概要

日本の和牛生産農家の負担を軽減し、
仔牛の命を守る「モバイル牛温恵」。

コールセンターは24時間365日体制でリモートとドコモが運営。製品についてはリモートが、通信分野についてはドコモが対応する。販売はドコモとJA全農グループが担う。

プロジェクト全体図

和牛の繁殖農家で産まれる年間50〜60万頭の仔牛のうち、約5.3%は分娩事故で失われる。頭数にして約3万頭に及ぶこの仔牛を救うことで、仔牛の価格安定や母牛の増加が期待できる。

長崎県壱岐市で和牛の繁殖農家を経営する樫尾光氏は2015年1月に「モバイル牛温恵」を導入した。体温センサ(写真左)を母牛にセットし、体温データを取得。データは、牛舎に設置した親機(写真右)から監視サーバに送られ分析される。

母牛の温度変化を感知し、分娩にかかわる情報をスマホ等にメールで通報。分娩の約24時間前の「段取り通報」は事前準備に役立ち、一次破水時には「駆けつけ通報」が送られてくるため、余裕を持って出産に立ち会うことができる。

「牛温恵」導入前は
牛の出産前、牛舎に
寝泊まりするのが当たり前。
今は、安心して自宅で
眠れるようになりました。

樫尾牧場 代表
樫尾 光 氏

 玄界灘に浮かぶ島、長崎県壱岐。全国有数の仔牛の産地として知られるこの島で、31頭の母牛をたった1人で飼育する樫尾光氏は、分娩事故が起こる原因の1つとして出産時の仔牛のサイズを指摘する。
「農家は市場で少しでも高く売りたいわけですから、妊娠末期は母牛のエサを増やして、お腹の仔牛を大きくしようとするんです。そうすると難産になってしまう可能性も高くなる。経済動物を育てる畜産業の宿命かもしれません」
 樫尾氏の牧場では、これまで分娩事故が起きたことはないが、そのためには払ってきた犠牲も少なくない。その要因は出産予定日のズレだ。
「黒毛和牛の妊娠期間は285日といわれていますが、出産が10日ズレることもざらです。予定日に産んでくれれば問題ありませんが、遅れた場合、産まれるまで牛舎内での仮眠が続きます。食事の時は家に帰りますが、牛舎に設置した監視カメラの映像を見ながらの食事でした」
 しかし、「モバイル牛温恵」を導入してからは、仮に出産予定日が過ぎても、毎日「今か、今か」と気を揉む必要はなくなった。分娩約24時間前に「段取り通報」というメールがスマートフォンに届いた段階で分娩に備えれば十分なのだ。加えて、分娩約2〜3時間前に起こる一次破水の段階では「駆けつけ通報」のメールも届き、余裕を持って分娩立ち会いと介助ができるようになった。ポケットにスマートフォンを入れておけば、農機具使用中で音が聞こえにくい状態でも、バイブ機能が確実にメール着信を伝えてくれる。
「牛舎に泊まる必要がなくなったのは、非常に助かっています。監視カメラの場合、映像をずっと見ていなければなりませんが、メールは音とバイブで知らせてくれますから、これまでに比べれば安心して睡眠が取れるようになりました」
 大きな仔牛を産ませたいから難産になる。難産になるから、立ち会いや分娩介助が必要。そのためには睡眠時間を削る必要があり、繁殖農家の労働環境は悪化する……。この悪循環を断ち切るのも、「モバイル牛温恵」が担う大きな役割のようだ。

樫尾牧場 樫尾氏

導入しやすい仕組みを
ユーザ目線で構築する。
それも「+d」が生み出す
価値の一つです。

(株)NTTドコモ 第一法人営業部
農業ICT推進
プロジェクトチーム担当部長
上原 宏

 「モバイル牛温恵」の安全性、確実性を高く評価したJA全農とドコモがリモートとパートナーシップを組んだことにより、普及は一気に加速。2016年2月時点で、全国633か所の繁殖農家に採用されている。このシステムを通信と販売でバックアップするドコモ第一法人営業部の上原宏担当部長は二つの成功要因をあげる。その一つが「つなぐ」を使命に張り巡らしたモバイル通信網の安定性だ。
「このシステムが使われる場所は人間より牛が多い場所ですから、一般的には携帯電話がつながりにくい場所ということになります。しかしわれわれは人口カバー率で語れないエリアをネットワークすることも使命と考えています。そういった意味では農業ICTにおけるモバイル通信網の安定性には自信を持っていますし、ユーザの皆さまにも評価をいただいています」
 そしてもう一つの要因としてユーザ本位で構築されたサービス体制をあげる。
「ICTというと、先端技術を競うことにこだわりがちですが、普及段階では、ユーザ目線が大切です。『モバイル牛温恵』は地域JAの窓口で購入でき、農家の方が日常的に使う飼料や肥料と同じ感覚でこの製品に触れていただけます。また、繁殖農家さんの業態を踏まえ、リモートと弊社が共同で24時間365日対応のコールセンターを設置したことも、普及に貢献したと考えています」
 農業ICTのアイデアは百花繚乱の様相だが、実際に製品として普及している例は決して多くない。今後は「モバイル牛温恵」のように、農家が導入しやすいスキームづくりも農業ICT普及の鍵になるだろう。

NTTドコモ 上原

畜産業の生産基盤を再構築するドコモの「+d」。

 日本の和牛は世界的な評価を得られるまでにブランドイメージを向上させたが、生産現場は決して安穏としていられる状況ではない。母牛、仔牛の頭数は2010年をピークに減少を続け、繁殖農家も高齢化や後継者不足により離農が止まらない。畜産関係者は口を揃えて「母牛の増頭」を訴えるが、豚の妊娠期間が114日であるのに対し、和牛は285日。1回の出産で産まれる頭数も豚の約10頭に比べ、牛は1〜2頭と、きわめて繁殖効率が悪い。つまり、一度減った母牛を元の頭数レベルに戻すには長い時間が必要だ。
 しかし、それも「従来通りの畜産業であれば」の話だ。これまでにない農業ICTが生まれ、そこにJA全農やドコモのようなプレーヤーが自身のアセットを提供すれば、生産基盤の改善が一気に進み、分娩事故、厳しい労働環境、離農、後継者不在、若者の畜産離れ……、といった畜産業のさまざまな課題解決の道筋が見えてくる。もちろんその先に期待されるのは、母牛数のV字回復と強い畜産業の実現だ。
 逆風にさらされながらも、「+d」は魅力的な新しい畜産業の創造に向けて大きな一歩を踏み出した。

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